アデノウイルス7型院内感染防止について(通知)

保 予 第374号

平成10年7月13日

(社)大阪府病院協会長様
大阪府保健衛生部保健予防課長

アデノウイルス7型院内感染防止について(通知)


 アデノウイルス7型は急性呼吸器疾患、咽頭結膜熱、胃腸炎などの病因として知られ ておりますが、わが国では1995年以降ウイルス分離報告数が、急増しております。国 立感染症研究所の病原微生物検出情報によると1980年1994年の15年間で合計 30例しか報告されておりませんが、1995年は78例、1996年182例、1997年255例 となっており、全国各地から感染者報告が出始めております。感染力が強く長期に排 泄されるアデノウイルス7型感染症の防止には医療従事者の教育や手洗いの徹底など 墓本的な院内感染防止対策が必要であるとされております。つきましては、貴会員等 に周知くださいますようお願いします。



1.アデノウイルス7型
○臨床経過の特徴:ウイルスは、咽頭(鼻汁、唾液、喀疲)、糞便、結膜から検出 され、飛沫感染や便・分泌物による接触感染で伝播する。咽頭に付着したウイルス は、48時間で一次増殖した後全身に拡がり多臓器で増殖する。潜伏期間は35日間 である。臨床症状は風邪症状に始まり発熱(38,39℃以上の高熱が特徴)、結膜炎症 状、咽頭痛、咳・痰の呼吸器症状、下痢などの消化器症状等が認められ、一般的に それぞれの症状は強く、肺炎を合併すると重篤化する傾向にあり、合併症のある子 供で死亡率が高い。

○診断について:血球減少、肝酵素上昇、フェリチン上昇が特徴的である。 アデノウイルス全般についてはEIA法による迅速抗原検出法。7型についてはウイ ルス培養ならぴにペアー血清による抗体価の推移で確定診断される。病弱な乳幼児 や老人、心肺機能低下や免疫機能低下などの基礎疾患のある人で高熱が続く肺炎患 者、或いは急速に進行する呼吸不全の乳幼児ではアデノウイルス7型感染の可能性 を考えなけれぱならないと思われる。

○治療について:今のところアデノウイルスに対する抗ウイルス薬はない。した がって、補助療法としてガンマグロブリン大量療法、ステロイド(パルス)療法な どを行う。重いアデノウイノレス感染症では、重篤な肺炎、脳症、或いは血球貧食 症侯群などがみられ、これらについては、人工換気療法、免疫抑制療法などを行う が、原疾患のある乳幼児では致命的となることがある。

2.予防
○感染が疑われる者の隔離をするとともに、主治医は速やかに院内の感染症対策 委員会等へ報告し、感染症対策の徹底をはかる。
○ マスク、ガウンの着用、手洗いの実行
○その他、院内感染症対策に準ずるが、ウイルスの感染力が強いので汚染された 形跡のある器具類や乳幼児のおむつ類の取り扱いには特に注意する必要がある。

3. 大阪府のアデノウイルス分離数
1)疾病別検出数


病名1996年1997年
痲しん様疾患
突発性発疹
感染性胃腸炎
口内炎・上気道炎
下気道炎
咽頭結膜熱
インフルエンザ様疾患 10
異型肺炎
その他
16 24


2)月別検出数



 本邦におけるアデノウイルス7型肺炎の臨床的検討

医療法人宝生会PL病院小児科


西村章、李和幸、西本真喜子、南浦保生、中嶋達郎、村上道子、 加藤伴親、村上韮司

【緒言】従来稀であったアデノウイルス7型(Ad7)肺炎が平成7年より全国で報皆され ている。今後の診療に資する目的で、Ad7肺炎のアンケート調査による臨床的検討を 行ったので報告する。

【方法】学会抄録や自治体衛生研究所の感染症情報を基に、Ad7肺炎報告施設にアン ケート調査を依頼した。この緒果、1997年12月までに、20施設81例に当科で経験 した8例を加えた21施設89例のAd7肺炎を対象として後方視的に検討した。

【結果】発症年齢:2.1土2.2歳(平均士標準偏差)で12ヶ月未満が29例(33%)で あった。基礎疾患:21例(24%)に認めた。院内・家族内感染:院内感染の疑いは32 例(36%)、家族内感染は20例(22%)に認めた。臨床症状:38.0℃以上の有熱期間 は9.6土4.4日で、全例に発熱、咳嗽を認め、58例(65%)に酸素投与、19例(21%) に人工換気を要する呼吸障害を認めた。その他、意識障害35例(39%)、けいれん19 例(21%)、浮腫14例(16%)、嘔吐・下痢13例(15%)を認めた。臨床検査:自血 球減少4499.5土2755.3/μl, 血小板減少15.1士9.3万/μl, GOT上昇202.6土275.3 IU/1, LD H上昇2709.8土1773.5 IU/1, CPK上昇692.0土1401.8 IU/1, フイブ リノゲン低下206.6土99.9/dl, フェリチン上昇3184.3土4190.1ng/mlが特徴的 であった。サイトカイン(slL2R,lL6,1FNγ)が測定されていた4例はすべて 高値であった。診断:ウイルス分離陽性が84例(94%)、抗体診断が42例(47%)で あった。EIA法による診断が13例(15%)であった。治療:パルス療法を含むステロ イド投与は41例(46%)であった。合併症:胸水25例(28%)、ARDS15例(17%) であった。肺外合併症は63例(71%)であり、肝障害28例(31%)、脳炎23例(26%)、 VAHS19例(21%)、胃腸炎13例(15%)、(26%)、DIC6例(7%)、心不全5例(6%). 、腹水4例(4%)等を認めた。予後:11例(12%)が死亡、24例(27%)に肺機能 低下、閉塞性肺疾患、多動、顔面神経麻痺、視野狭窄の後遺症を認めた。予後危険因 子:多重ロジスティック回帰分析による死亡危険因子は、墓礎疾患の存在とLDH高値 であり、後遺症危険因子は基礎疾患の存在であった。

【考案】Ad7肺炎は重症例が多く、金体の約40%が死亡または後遺症を残す点で重大 である。症状、検査所見から、高サイトカイン血症の存在が推定される。今後、EIA 法活用による早期診断と高サイトカイン血症の検察・治療が重要と考えられた。