インフルエンザ”Q and A”

平成11年11月


国立感染症研究所感染症情報センター
厚生省保健医療局結核感染症課
日本医師会感染症危機管理対策室


[簡単に理解したい方のために]

Q1: インフルエンザと普通のかぜはどう違うのですか?
Q2: インフルエンザにはどんな種類がありますか?
Q3: インフルエンザにかかるとどんな症状がでるのですか?
Q4: インフルエンザにかかったらどうすればよいのですか?
Q5: インフルエンザにかからないためにはどうすればよいのですか?
Q6: 予防接種や市販薬はどのような効果がありますか?
Q7: 乳幼児や高齢者はどんなことに気をつければよいのですか?
Q8: 一昨年、香港で発生した新型インフルエンザは、普通のインフルエンザとどう違うのですか?
Q9: ワクチンの接種費用はどうなるのですか?
Q10: ワクチンで健康被害が発生した場合は、どのように対応されるのですか?

[より詳しく知りたい方のために]

(インフルエンザ総論、ウイルス)
Q1: インフルエンザはかぜとどう違うのですか?
Q2: インフルエンザの流行の歴史について教えてください。
Q3: インフルエンザウイルスについて教えてください。
Q4: インフルエンザウイルスのH、Nの番号は何を表しているのですか?
Q5: インフルエンザウイルスの変異について教えてください。
Q6: インフルエンザはどうやってうつりますか?
Q7: インフルエンザにかからないためにはどうすればいいですか?

(臨床一般・診断治療)
Q8: インフルエンザの症状と診断について教えてください。
Q9: 合併症について教えてください。
Q10: インフルエンザにはどんな治療法がありますか?
Q11: インフルエンザの抗ウイルス薬について教えてください。

(ワクチン)
Q12: ワクチンはいつ頃接種すればよいでしょうか?
Q13: ワクチンでどのような効果が期待できますか?
Q14: 昨年ワクチンを接種したのですが今年も接種した方がよいでしょうか?
Q15: ワクチンを接種した方がよいのはどのような人でしょうか?
Q16: ワクチンを1回だけ接種したのですがそれでもよいでしょうか?次はいつ頃接種すればよいでしょうか?
Q17: 卵アレルギーのある人にワクチン接種できるでしょうか?
Q18: 妊婦にワクチンを接種できるでしょうか?
Q19: ワクチンはどのようにしてつくられているのですか?
Q20: ワクチンを接種したときの副反応にはどんなものがありますか?
Q21: ワクチン接種が望ましくない人はどんな人ですか?
Q22: ワクチンの接種費用はどうなるのですか?
Q23: ワクチンで健康被害が発生した場合は、どのように対応されるのですか?

(インフルエンザの流行)
Q24: 今年流行するのはどの株ですか?
Q25: 今、私の住む地域ではやっているのはどの株ですか?
Q26: どのくらいの人がインフルエンザにかかっていますか?
Q27: インフルエンザ流行のピークはいつですか?
Q28: インフルエンザは外国でもはやっていますか?


[簡単に理解したい方のために]

Q1:インフルエンザと普通のかぜはどう違うのですか?

 普通のかぜとインフルエンザを混同してはいませんか。普通のかぜはライノウイルスやコロナウイルス等の感染によって起こります。症状としては、のどが痛む、鼻がむずむずする、水様の鼻汁が出る、くしゃみや咳が出るなどが中心で、全身症状はあまり見られません。発熱もインフルエンザほど高くなく、重症化することはめったにありません。一方、インフルエンザにかかると39度以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の症状が強く、あわせて、のどの痛み、鼻汁などの症状も見られます。さらに、気管支炎、肺炎などを併発し、重症化することが多いのもインフルエンザの特徴です。また、インフルエンザは流行が爆発的に始まり、短期間に乳幼児から高齢者まで膨大な人を巻き込むという点で普通のかぜとはっきり区別されます。さらに、普通のかぜが流行しても死亡する人はあまり増えませんが、インフルエンザが流行すると、65歳以上の高齢の人々で死亡率が普段より高くなるという点でも大きな違いが見られます。

Q2:インフルエンザにはどんな種類がありますか?

 インフルエンザウイルスは、膜の表面が2種類のトゲのような突起で覆われています。この2種類の突起はH、Nと略されていますが、この突起の組み合わせなどから、インフルエンザウイルスはA型、B型、C型に分類されます。インフルエンザの予防は、この突起に対する防御のための抗体を持っているかどうかが鍵を握ります。現在、ヒトの世界で流行しているのは、A/ソ連(H1N1)型ウイルス、A/香港(H3N2)型ウイルス、B型ウイルスの3種類です。なお、これらのウイルスの違いによって、症状に大きな違いはありません。

Q3:インフルエンザにかかるとどんな症状が出るのですか?

 典型的な症状として、突然の発熱、悪寒が見られます。鼻汁、鼻づまり、くしゃみ、せき、のどの痛みなどの普通のかぜの症状のほかに、関節痛、筋肉痛といった、いわゆる”ふしぶしの痛み”が加わります。気管支炎や肺炎などの合併症もまれではありません。
 また、高齢者や呼吸器・心臓などに慢性疾患を持つ人は、肺炎を併発して、重症化したりする症例が多いので十分注意する必要があります。さらに、近年、乳幼児がインフルエンザにかかると、脳炎、脳症を併発して死亡するといった問題も指摘されています。

Q4:インフルエンザにかかったらどうすればよいのですか?

 かぜだと考えずに、早めに医療機関を受診して治療を受けましょう。
 安静にして、休養をとりましょう。睡眠不足は一番の大敵ですから、睡眠を十分にとることが大切です。乾燥はインフルエンザウイルスが増えるのに最適な条件です。部屋の湿度を保ちましょう。また、水分を十分に補給しましょう。お茶、ジュース、スープ、お味噌汁など何でもけっこうです。休養をとることは、自分のからだを守るだけでなく、他の人にインフルエンザをうつさないという意味でも重要なことです。

Q5:インフルエンザにかからないためにはどうすればよいのですか?

 予防の基本は、流行前に予防接種を受けることです。米国では当たり前になっている予防策です。インフルエンザが流行してきたら、人混みは避けましょう。特に高齢者や慢性疾患を持っている人は、人混みや繁華街への外出を控えましょう。疲れている時や睡眠不足の時に外出すると、インフルエンザに非常に感染しやすくなります。
 インフルエンザウイルスは湿気に非常に弱いので、室内では加湿器などを使って適度の湿度を保ちましょう。常日頃からバランスよく栄養をとることも大切です。また、外出時のマスクや帰宅時のうがい、手洗いは、かぜの予防と併せておすすめします。

Q6:予防接種や市販薬はどのような効果がありますか?

 もし、インフルエンザの予防接種を受けていれば、予防接種を受けないでインフルエンザにかかった人の70%から80%の人は、インフルエンザにかからずにすむか、かかっても症状が軽いという有効性が証明されています。特に高齢者の場合は、肺炎やインフルエンザによる入院・死亡を減らすことが証明されています。また、流行するインフルエンザウイルスの型の予測がはずれると効果はありませんが、WHOの指導のもと世界の専門家による予測により、この10年間、予測と流行したウイルスはほぼ一致しており、この予測に基づいて有効なワクチンが作られています。
 市販のかぜ薬は、発熱や鼻汁、鼻づまりなどの症状をやわらげることはできますが、インフルエンザウイルスに直接効くものではありません。

Q7:乳幼児や高齢者はどんなことに気をつければよいのですか?

 乳幼児の合併症で気を付けなければならないものとして、脳炎・脳症の問題が指摘されています。お茶、ジュース、ミルクなど水分をとってもすぐ吐いてしまったり、けいれんを起こしたときはすぐに医療機関で受診してください。
 高齢者は流行前にワクチンの接種を受けましょう。これはインフルエンザ予防の基本です。インフルエンザが流行しているときは、人混みへの外出は避けましょう。疲れている時や睡眠不足の時に無理に外出するのは避けましょう。

Q8:一昨年、香港で発生した新型インフルエンザは、普通のインフルエンザとどう違うのですか?

 一昨年香港で発生した新型インフルエンザウイルスは、毎年流行する普通のインフルエンザウイルスとは全く違います。香港で発生したために、通常流行するA/香港型と混乱されたかもしれませんが、一昨年香港で発生した新型ウイルスは、膜の表面の突起がH5とN1という全く新しい組合せによるものでした。かたちの違う突起をしたウイルスに対して、人は防御のための抗体をまったく持っていないため、世界的な大流行を起こす可能性があります。

Q9 ワクチンの接種費用はどうなるのですか?

 現在、インフルエンザの予防接種は任意の予防接種であり、接種費用は自己負担となります。
Q10 ワクチンで健康被害が発生した場合は、どのように対応されるのですか?
 医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法による被害救済の対象となります。健康被害の内容、程度に応じて、厚生省の中央薬事審議会(副作用被害判定部会)での審議を経た後、医療費、医療手当、障害年金、遺族年金、遺族一時金等が支給されます。詳細な内容は、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(TEL:03-3506-9411)に御照会ください。

[より詳しく知りたい方のために]

(インフルエンザ総論、ウイルス)
Q1: インフルエンザはかぜとどう違うのですか?

 インフルエンザは、インフルエンザウイルスという特定の微生物の感染によって起こる呼吸器疾患です。それに対し、いわゆる「かぜ」(かぜ症候群)とは、ライノウイルスやコロナウイルス、RSウイルスなど種々のウイルス感染によって起こる上気道炎の総称です。インフルエンザでも軽い場合には、その他の「かぜ」と症状で区別がつきにくいですが、一般にインフルエンザの症状は重く、特に高齢者、心臓病など基礎疾患がある場合では重症化しやすい傾向があります。さらに、肺炎や脳症などの合併症も問題となります。時に大流行を起こし、多くの犠牲者を出すこともあります。ちなみに、よく似た名前を持つインフルエンザ桿菌という細菌がありますが、これは以前インフルエンザの原因と間違われたためについた名前で、インフルエンザの原因ではありません。

Q2:インフルエンザの流行の歴史について教えてください。

 インフルエンザの流行は歴史的にも古くから記載されていますが、科学的に立証されているのは1900年頃からで、数回の世界的大流行が知られています。中でも、1918年にはじまった「スペインかぜ(H1N1亜型)」は被害の甚大さで際だっています。当時、インフルエンザによる死亡者数は全世界で2,000万人とも4,000万人ともいわれ、日本でも約40万人の犠牲者が出たと推定されています。その後、1957年にはアジア型(H2N2)が、1968年には香港型(H3N2)が世界的な大流行を起こしています。ついで1977年にはソ連型(H1N1/USSR)が加わり、現在はA型であるH1N1とH3N2、およびB型の3種類が世界中で共通した流行株になっています。

Q3:インフルエンザウイルスについて教えてください。

 インフルエンザウイルスは径1万分の1ミリ(100nm)の大きさの多形性のウイルスです。ウイルスは細菌やカビなどの微生物と異なり、生きた細胞の中でのみ増えることができるため、インフルエンザウイルスも空気や土壌中などで増えることはできません。ヒトに感染した場合は、鼻腔や咽頭粘膜の表面の上皮細胞に結合・細胞侵入し、その中で増殖します。インフルエンザウイルスはその表面を脂質の膜で包まれているため、脂質可溶化剤(エーテル、界面活性剤)などで不活化され感染力を失います。
 インフルエンザウイルスは、その内部蛋白の違いにより、A型・B型・C型に分けられます。A型はヒト・ブタ・トリなどに感染します。原則として、ヒト型のウイルスはヒトに、トリ型のウイルスはトリに感染しますが、ブタはトリ型、ヒト型、ブタ型に感染し、A型インフルエンザウイルスの大変異に大きな役割を果たしていると考えられています。また、B型はヒトに感染し、A型とともに流行を起こします。C型もヒトに感染しますが、大きな流行は起こさないとされています。

Q4:インフルエンザウイルスのH、Nの番号は何を表しているのですか?

 A型やB型のインフルエンザウイルスの表面からは、H蛋白(赤血球凝集素)、N蛋白(ノイラミニダーゼ)という2種類の蛋白がウニの棘のように突きでています。これら2つの蛋白はスパイク蛋白と呼ばれ、ウイルスの感染に重要な働きをしています。ヒトがあるインフルエンザウイルスに対して免疫を持っていても、異なるスパイク蛋白をもつウイルスに対してはその免疫が効かず感染してしまいます。ソ連型インフルエンザにかかったあと香港型にかかったり、A型インフルエンザにかかったあとB型にかかったりすることがあるのはこのためです。
 A型インフルエンザウイルスは、H・N蛋白とも複数の種類があり、その組み合わせでさらに分類されます。たとえば、香港型といわれるウイルスはH蛋白が3、N蛋白2という組み合わせでH3N2ですし、ソ連型はH1N1です。H1、H2、H3はヒトの間で感染が起こり、流行株となりえます。B型インフルエンザウイルスではそれぞれ1種類で組み合わせによる分類は行われません。

Q5:インフルエンザウイルスの変異について教えてください。

 インフルエンザウイルスでは、しばしばスパイク蛋白の変異が起こります。そのため蛋白の抗原性が変わり(抗原変異)、以前の免疫が効かなくなるのです。蛋白の変異は、ウイルス遺伝子の変異によって起こり、不連続変異(大変異)と連続変異(小変異)があります。大変異がおこると、ウイルスの抗原性が大きく変わり、大流行の原因になると考えられています。
 A型インフルエンザウイルスは8本の遺伝子を持っていますが、そのうち数本が別のA型インフルエンザウイルスの遺伝子と入れ替わってしまうことを不連続変異といいます。2種類以上のウイルスが同時にブタに感染した場合にその体内で起こるといわれています。例えば、H3N2のウイルスとH1N1からH3N1ができたりすることです(ほかにも様々な組み合わせが可能です。)。ブタはヒト型ウイルス、トリ型ウイルスの両方に感染しうるため、トリ型、ヒト型、ブタ型の様々な組み合わせのウイルスもできる可能性があります。新しいウイルスが、ヒトに感染可能であれば、ヒトに流行を起こす可能性もあります。
 また、スパイク蛋白の遺伝子の一か所が突然変異(点変異)することによって、蛋白の一部が変化する事を連続変異といいます。同じH3N2でも少しずつ抗原性が変わりうるので、年によってワクチン株を変えるのはそのためです。大変異と異なり、A型だけでなくB型インフルエンザウイルスでも起こります。

Q6:インフルエンザはどうやってうつりますか?

 患者からの咳などで空気中に拡散されたウイルスを鼻腔など気道に吸入することによって感染します。

Q7:インフルエンザにかからないためにはどうすればいいですか?

 インフルエンザは、高齢者や基礎疾患を持つ方は肺炎などの合併症を起こしやすいといわれています。インフルエンザの重症化を防止するためには、ワクチンは有効であり、特に高齢者や基礎疾患を持つ者などの場合は医師と相談の上接種することが望ましいとされています。
 また、厚生省は普通のかぜの予防と併せて一般的な予防として次のことを勧めています。
・十分な栄養と休養をとる。
・人混みを避ける。
・室内の乾燥に気をつける。
・マスクの着用
・手洗いとうがいの励行
(臨床一般・診断治療)
Q8:インフルエンザの症状と診断について教えてください
 症状については、突然の発症、38度を超える発熱、上気道炎症状、全身倦怠感等の全身症状のすべてが出現することが特徴的です。流行期(我が国では例年11月〜3月)にこれらの症状のあった場合はインフルエンザの可能性が高いと考えられます。B型よりもA型のほうが症状は強い場合が多く、潜伏期は1日から5日(平均2日間)とされています。ただし、症状は多彩で肺炎などを合併する場合もあり、注意が必要です。症状の持続時間は一般に2日から3日ですが、場合によっては5日を超えることもあります。咽頭などからウイルスが分離されたり、血液検査で抗体価の上昇が認められれば確定診断となります。最近、簡便なA型インフルエンザウイルス抗原検出キットの一部が保険適用になりました。

Q9:合併症について教えてください

 高齢者や乳幼児、また、呼吸器系の病気や心臓に病気を患っている方では、インフルエンザにかかると合併症を併発する場合があります。細菌の二次感染による肺炎・慢性気管支炎の増悪は高齢者などに起こりうる合併症で、その他の合併症としては、ウイルス自身による肺炎や、肺水腫・心筋炎・アスピリンとの関連が指摘されているライ症候群などが挙げられます。合併症の状況によっては入院を要したり、死亡する例もあり注意を要します。時に大流行を起したり、合併症が重く出現することがある点で多くの犠牲者が出る場合があります。近年、我が国では、まれながら小児でのインフルエンザ脳炎・脳症の報告が見られ、原因不明であることから病態の解明が急がれます。

Q10:インフルエンザにはどんな治療法がありますか?

 一般的なインフルエンザに対する治療としては、症状に応じた対症療法が基本となります。高齢者や別の病気を患っている重症化しやすい方の細菌による混合感染には抗生物質が使用されます。15歳未満の者に対しては、ライ症候群への危険性を考慮して、インフルエンザに罹患していると考えられる場合にはアスピリンの服用は避けましょう。昨年11月から抗A型インフルエンザ薬として、アマンタジンが我が国においても保険適用になりました(詳細はQ11参照)。予防にまさる治療はないという観点から、ハイリスク者にはワクチン接種が重要な予防手段となります。

Q11:インフルエンザの抗ウイルス薬について教えてください

 我が国では1970年代からパーキンソン病の治療薬として用いられてきた経緯を持つ塩酸アマンタジン(商品名:シンメトレル)が、平成10年11月A型インフルエンザ用の抗ウイルス剤として認可されました(A型のみにしか効果がないことは重要です。)。米国では重症化のおそれがあるとされるグループやワクチンの接種が出来ない者、医療従事者へのワクチン接種を補う予防薬としての位置付けが確立しています。しかし、我が国では抗ウイルス剤としての使用経験が少なく、また、アマンタジンを投与された患者の約30%でアマンタジン耐性のA型インフルエンザウイルスが出現するという報告もあることから安易な使用は慎むべきです。副作用としては、主として嘔気などの消化器症状やふらつき、不眠などの中枢神経症状が軽度ながら出現することがあると報告され、使用した場合の注意事項としては、車の運転を避けることなどが挙げられています。その他、世界的には、A型およびB型インフルエンザ両方に効果があると期待されているいくつかの抗ウイルス薬も開発されています。

(ワクチン)
Q12:ワクチンはいつ頃接種すればよいでしょうか?

 11月から接種を開始することをおすすめします。2回接種が原則で、2回目は1回目から1〜4週間空けて接種します。流行期前にワクチン接種を済ませるためには、 11月から接種をはじめるとよいでしょう。

Q13:ワクチンでどのような効果が期待できますか?

 インフルエンザワクチンの接種で、インフルエンザによる重篤な合併症や死亡を予防し、健康被害を最小限にとどめることが期待されます。インフルエンザに対する決定的な治療法がない現在、ワクチンで重症化を予防することがインフルエンザに対抗する最大の手段なのです。特に65歳以上の方や基礎疾患を有する方(心疾患、肺疾患、腎疾患など)は重症化しやすいので、かかりつけの医師とよく相談のうえ、早めに接種を受けることをおすすめします。なお、インフルエンザワクチンでは他のかぜウイルスによる普通感冒を防止することはできません。

*参考 インフルエンザワクチンの効果

○ 高齢者の場合

・予防接種を受けていない人(※1)が受けていた場合との死亡者数の比較
 受けていない人で、死亡者数1,000人の場合、
 受けていたなら、死亡者数200人、助かった人の数800人

・予防接種を受けていない人(※2)が受けていた場合との入院者数の比較
 受けていない人で、入院者数1,000人の場合、
 受けていたなら、入院者数500人、入院するほど悪化しなかった人の数500人

○65歳以下の健康な人の場合

・予防接種を受けていない人が受けていた場合との発病者数の比較
 受けていない人で、発病者数1,000人の場合、
 受けていたなら、発病者数200人、発病しなかった人の数800人

※1:施設入所者、※2:施設入所者と一般高齢者の平均

(出典:米国疾病管理センターMMWR46(RRー9)1997)

Q14:昨年ワクチンを接種したのですが今年も接種した方がよいでしょうか?

 毎年接種することをおすすめします。インフルエンザウイルスは毎年変わりながら流行するため、昨年のワクチンが今年流行しているウイルスに有効である保証はありません。また、ワクチンの効果の持続する期間が約5か月であることを考慮すれば、毎年接種が必要です。

Q15:ワクチンを接種した方がよいのはどのような人でしょうか?

 まず第一に65歳以上の高齢者が挙げられます。また、養護施設等に入所している慢性の病気をもつ方、気管支喘息をもつ小児、肺や心臓の病気の患者、糖尿病、腎不全、免疫不全症(免疫抑制剤による免疫低下も含む)などは、重症化を防ぐためにワクチンでの予防が望ましいと考えられます。このような方は、かかりつけの医師と相談のうえ、早めに接種することをおすすめします。また、上記の方にインフルエンザをうつさないようにするため、同居やお世話をしている人もワクチン接種をおすすめします。

Q16:ワクチンを1回だけ接種したのですがそれでもよいでしょうか?次はいつ頃接種すればよいでしょうか?

 インフルエンザワクチンは2回接種が原則です。2回目は1回目の1〜4週間後に接種します。大人であれば過去のインフルエンザ流行時の免疫があると考えられ、1回の接種であっても免疫効果が期待できるという専門家の意見もあります。米国などでは成人には1回接種となっています。

Q17:卵アレルギーのある人にワクチン接種できるでしょうか?

 できます。ただ、ワクチンの製造過程においてインフルエンザウイルスの増殖に孵化鶏卵を用いるためにわずかながら卵由来の成分が残存します。これによる卵アレルギーの副作用がごくまれに起こり得ます。近年は高純度に精製されているのでほとんど問題となりませんが重篤な卵アレルギーがある場合、例えば鶏卵を食べるとひどい蕁麻疹や発疹を生じたり口腔内がしびれる人に対しては、接種を避けるか、注意して接種する必要があります。

Q18:妊婦にワクチンを接種できるでしょうか?

 インフルエンザワクチンは病原性をなくした不活化ワクチンであり、胎児に影響を与えるとは考えられていないので不適当者には含まれません。しかし、妊婦又は妊娠している可能性の高い婦人には、予防接種上の有益性が危険性を上回る場合にだけ接種するすることが望ましいでしょう。米国の報告では、もし接種するなら妊娠のいかなる段階でもインフルエンザシーズンの前に行うのが望まししいことが言われています。今のところ妊婦における特別な副作用の報告はありませんが、念のため医師と相談のうえ接種を受けてください。出産後の接種については体力がほぼ正常に回復する3か月後以降ならさしつかえないといえます。

Q19:ワクチンはどのようにしてつくられているのですか?

 インフルエンザワクチンは高度に精製されたウイルス粒子をエーテル処理したもので、そのウイルス株はインフルエンザの流行状況を考え毎年決定されます。ワクチン製造用のインフルエンザウイルスを発育鶏卵の尿膜腔内に接種して培養、増殖させ、漿尿液から遠心にて精製・濃縮したウイルスを、その副反応の原因と考えられる脂質成分の大部分を除去すべくエーテルで処理し、更にホルマリンで不活化(病原性をなくすこと)したものです。ちなみに、インフルエンザワクチンは有精卵から作られるため、急な大量生産は出来ません。

Q20:ワクチンを接種したときの副反応にはどんなものがありますか?

 一般的に副反応は軽微です。接種局所の反応が主であり、発赤、腫脹、疼痛をきたすことがありますが2〜3日で消失します。発熱、頭痛、悪寒、倦怠感などもまれに起こります。極めてまれですが、死亡も発生します。卵アレルギーの人には蕁麻疹、発疹、口腔のしびれ、アナフィラキシーショックなどの可能性がいわれています。また、ワクチンに安定剤として含まれていたゼラチンに対するゼラチンアレルギーが報告されていましたが、現在、ゼラチンを用いない方法へと改善が進んでいます。その他ギランバレー症候群、急性脳症、痙攣、紫斑などの報告がありますが、その関連については明らかな証拠は確認されていません。

Q21:ワクチン接種が望ましくない人はどんな人ですか?

 一般的な禁忌、つまりワクチン接種不適当者は以下のように示されています。

<予防接種実施規則第6条による接種不適当者(抜粋)>

(1)明らかな発熱を呈している者(注)

(2)重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者

(3)当該疾病に係る予防接種の接種液の成分によってアナフィラキシーショックを呈したことが明らかな者

(4)その他、予防接種を行うことが不適当な状態にある者

(注)通常は、37.5度を超える場合をいいます。
 このほかに生理機能の低下した高齢者、著しい栄養障害者においても必ず医師にご相談ください。

Q22 ワクチンの接種費用はどうなるのですか?

 現在、インフルエンザの予防接種は任意の予防接種であり、接種費用は自己負担となります。

Q23 ワクチンで健康被害が発生した場合は、どのように対応されるのですか?

 医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法による被害救済の対象となります。健康被害の内容、程度等に応じて、医療費、医療手当、障害年金、遺族年金、遺族一時金等が支給されます。詳細な内容は、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(TEL:03-3506-9411)に御照会ください。

(インフルエンザの流行)
Q24:今年流行するのはどの株ですか?

 近年は、インフルエンザAのいくつかの型とインフルエンザBのウイルスが検出され、複数のウイルスによるインフルエンザが流行していると考えられます。例えば、昨シーズン(1998から1999年)は1月末をピークにA香港型(H3N2)が主に分離され、遅れて3月をピークにB型が検出されています。わずかですがAソ連型(H1N1)も1月から2月に分離されています。実際の流行はこのように流行が始まって確認され、連続変異だけでなく不連続変異も起こりうるため予測は大変困難です。一方、ワクチン製造のため、前年の流行規模や変異株の状況などから予測を行っています。今年のワクチンは、A香港型(H3N2)のシドニー株、Aソ連型(H1N1)の北京株、B型の山東株を混合したものです。流行や検出の現状は、地域の感染症情報センター、保健所や国立感染症研究所のホームページで知ることができます。なお、今シーズンでは、10月21日に静岡県でA香港型(H3N2)が分離されています。
○国立感染症研究所感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/index-j.html

Q25:今、私の住む地域ではやっているのはどの株ですか?

 近年、日本全体では複数のインフルエンザウイルス株が検出されており、地域によっては複数の株が検出されています。これらは患者の皆さんと全都道府県にあるインフルエンザ定点医療機関の協力によって集められ、地方衛生研究所で検査されます。ピーク時には週1,000件以上検査され、現状が速報されています。検出の現状は地域の感染症情報センター、保健所や国立感染症研究所のホームページで知ることができます。
○国立感染症研究所感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp

*参考 我が国のインフルエンザサーベイランス

1 インフルエンザ様患者発生数:保育園、幼稚園、小学校、中学校におけるインフルエンザ様疾患が集団発生したことによる、休校数、学年・学級閉鎖施設数の状況を把握するために各施設から保健所に毎日報告される。ここで報告されるのは、閉鎖される直前のその学級・学年等における患者数である。この報告は各都道府県の感染症担当部局で週単位にまとめられ、全国の現状を知ることができる。

2 感染症新法に基づく定点医療機関からの届出数:小児科約3,000、内科約2,000のイ ンフルエンザ定点医療機関から週単位で保健所に届けられている。1999年4月から内 科が加わり成人についての情報が加わるようになった。

3 病原体定点からの流行株情報:2の定点医療機関の内約10%が病原体定点となり 咽頭ぬぐい液を採取し、地方衛生研究所で検査している。

Q26:どのくらいの人がインフルエンザにかかっていますか?

 インフルエンザは以前から届出伝染病でしたが、感染症新法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)の施行された今年(平成11年4月)から、インフルエンザを報告する定点医療機関を増やし、法に基づいた報告がされるようになりました。このほか、全国の保育園、幼稚園、小学校、中学校等における休校数、学年・学級閉鎖施設数の状況を把握するための「インフルエンザ様疾患発生報告」があります。この10年ほどを見ると、多い年では127万人(平成9年から10年)が報告されておりますが、年により異なります。新しい型のインフルエンザには、ほとんどの人が免疫を持たないため、広く流行する可能性があります。また、近い将来新型インフルエンザが出現するとの警告が出されています。流行や検出の現状は地域の感染症情報センター、保健所や国立感染症研究所のホームページで知ることができます。
○国立感染症研究所感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp

Q27:インフルエンザ流行のピークはいつですか?

 近年の受診のピークは、1月から2月で、12月から増え始め4月には終息することが多いようです。

Q28:インフルエンザは外国でもはやっていますか?

 インフルエンザは世界中で流行していますが、温帯地方では冬に(南半球では7〜8月)、熱帯・亜熱帯地方では雨季を中心に流行が見られます。流行株は世界中で大きな差はありません。世界の週ごとの流行状況は、WHOが主催するホームページで知ることができます。